偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
 お兄様は、後ろで寝息を立てている。
 滅多な事では起きないところは、お父様と似ているかもしれない。

「……兄さんを選んでくれて、ありがと」
「テオ……?」
「…………」

 テオは黙って目を瞑り、「おやすみ」とだけ呟いて眠ってしまった。

 どういう、事なんだろう?
 
 そういえば……。
 テオはお兄様のものを欲しがったり、好きになったりする傾向があった。
 それは、あの事件で痛いほどよくわかった。

 そして私は、お兄様を愛しているのに義弟(テオ)を見捨てることができない。
 昔からテオは私の心の拠り所だったのだ。
 一緒に住む事を許してくれたお兄様には感謝している。

 お兄様の心はどうなのだろうか。
 もし、お兄様にとって理由もなくかけがえのない家族が私なのだとしたら。
 妻とか義妹(いもうと)とか、そんな枠を超えたものだとしたら。

 誰一人欠ける事のできない私たちは、なんて罪深い関係なのだろうか。



 ── 偽りのトリアーダ 完 ──
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