偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
「兄さんの万年筆、素敵だね」
「これはダメだよ。父さんからもらった、大切なものだからね」
「ちぇー」

 諦めてくれたかと思った。
 しかし、テオは黙って万年筆を持ち出し──

「ごめんなさい、兄さん……」

 しょんぼりと謝ってきたので、反省しているのかと思ったが、

「壊れちゃった……」

 と、その瞬間には笑顔になっていた。
 
「はぁ〜……」

 あまりにもひどいので、両親に相談して、同じものを買ってもらうようにした。

「兄さんのカバンがいい」
「テオ、いい加減にしてよ。同じものを買ってもらっただろう?」
「兄さんのがいいーー!」

「テオドール! なんであんたはそう、アルフレッドのものばかり欲しがるの!!」

 さすがに、母が間に入ってくれた。

「だってぇ……。兄さんが好きなもの、僕も好きになっちゃうんだもの……」

 父も母も呆れ返っていた。

 俺はその頃から、好きなものを好きと──言えなくなっていた。

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