偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
 母は、その頃からテオへの態度が少しよそよそしくなった。
 会話をするのは、俺やリアとばかり──

 その光景が、テオにどう映ったかはわからない。
 だが、テオが12になった頃、事件は起きた。

 母が、階段から落ちて亡くなったのだ。

 テオと、出かけている時の出来事だった。

 うちは小高い丘の上の住宅街に家があり、駅への近道に長い階段がある。
 母とテオは、そこを通ってどこかへ出かける途中だったらしい。

 俺は、その時大学から帰る途中で、偶然にも見てしまった。
 テオが、母の背中を押したことを──

 そして、俺の方を見て言った。

「ごめんね、兄さん……」天使のような笑顔で──

「壊れちゃった」



 そう、言ったのだ。


< 28 / 252 >

この作品をシェア

pagetop