偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
 俺は、恐ろしくなり父に言及した。
 しかし事件は証拠不十分で事故として処理され……
 テオがお咎めを喰らうことはなかった。

 ただ、父は父でテオを気にかけてくれていたようであり──

 ある日、父は俺だけに言った。

「アルフレッド……。おまえに言われてから、私もテオドールを気にかけていたが、おまえが言っていたような素振りはない。ただ、もしおまえの言っていたことが本当なら……」

 父は、俺のこともテオのことも信じて尊重してくれていた。
 どんな可能性も切り捨てずにいてくれた。
 そんな父が、真剣な顔で真っ直ぐに言った。

「リアだけは、母さんの二の舞にするな」

「!」

「物は壊されてもなんとかなる。しかし、人の命だけはどうにもならん」

 今思えば、父は俺の気持ちに気づいていたのかもしれない。

「リアは……あの子はきっと、ゴンドル族の希望になる。今はまだゴンドル族との差別はあるが……。私は近い将来、その差別もなくなると思っている」

 父は、よくゴンドル族への差別緩和を訴えていた。
 俺は、そんな父を尊敬していた。

 リアを、テオの毒牙にかからせはしない──



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