偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
 それから数年が過ぎ、俺たち家族は平穏な日々を過ごしていた。

 ある日、テオが大学進学のために家を出たいと言ってきた。
 父は、テオの前向きな進学には大賛成だった。
 内心、ホッとした。
 リアとテオが離れてくれれば、俺も無理に気を張らずに済む。

 その気の緩みが不幸を招いたのか……。
 テオが家を出た数ヶ月後、父がゴンドル族を庇っていると疑われ、逮捕された。
 リアの存在はうまく隠せたが、疑いがすぐに晴れるわけではなく……。
 父は獄中で流行病(はやりやまい)にかかり死亡した。

 感染力の強い病だったらしく、身内ですら葬儀に立ち会えたのは埋葬が済んでからだった。

 父さんが、死んだ──
 リアを庇ったせいで……逮捕され……!

 ドンッ!
 俺は、やり場のない怒りを抑えられずに壁を叩いた。

「……っ!!」

 呼吸が乱れ、胸を締め付けられる感覚だった。
 なんなんだ……この湧き出る黒い感情は……!

 リアがいなければ……

 リアがいなければ……!!

「お兄様……? 大丈夫ですか……?」

 リアは、いつも通り心配してくれただけだった。
 それなのに──

 リアの健気な瞳。

 俺は、その瞳に惑わされるように──
 今まで抑えて来た感情を、一気に爆発させた。

「お兄さ……! ん、んん!」

 リアの唇を塞ぎ、そのまま欲望に身を任せ体を重ねた。

 俺は、いつの間にか──
 憎しみを持たないと、人を愛せないようになっていた──。

 それが……最初の発作だった。
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