偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
「痛いなぁ、兄さん」

 傘の持ち手の部分が当たるように振り下ろしたが、テオにはあまり効いておらず、それどころか傘を奪われ折り曲げられてしまった。

「テオ!! リアは……!!」

「あーあ、バレちゃった。まあ、兄さんのことだもん。姉さんにGPSくらい付けてるよね」

 テオは、まったく悪びれる様子もなく、立ち上がって視線を下に移した。
 テオの衣服は乱れていなかったが──。

「でも、ちょっと遅かったかなぁ……」

 俺は、後悔の念を抱きながら、ソファの向こう側にまわった。

 ──最悪だ。
 
 古びたソファの上には、傷つけられ乱暴されたリアが、一糸纏わぬ姿で仰臥していた。
 目を見開き、悲愴な表情で、涙の跡がはっきりとわかるほどだった。

 胸が苦しい。
 だが俺は、目を背けるわけにはいかなかった。

「ごめんね、兄さん……」


 テオはまたしても、


「壊れちゃった」


 あの笑顔で言った。


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