偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
 その時、パトカーと救急車のサイレンが聞こえた。こちらに向かって来ている。
 警察は、俺が予め呼んでおいたものだ。しかし、救急車は、まさかテオがリアのために……?

「あー。警察呼んでたのかぁ……。じゃあ、仕方ないなぁ……」

 テオがこちらに近づいてきて、腹部に蹴りを入れられた。
 鈍い音がした気がする。

「ぐっ……!」

「俺さぁ……兄さんに捕まるほどヤワじゃないんだ。あ、救急車、もう一台呼んだ方がいいかもね」

 テオは最後の情けか、リアに布をかけ、

「じゃあね、兄さん」

 それだけ言って逃げてしまった。

「ぐっ……! ま、て……!」

 腹部に激痛が走り、うまく動けなかった。
 テオを諦めて、リアに向き直す。

「リ……ア……」

 激痛のあまり、気を失ってしまい──

 次に目覚めた時は、病院のベッドの上だった。
< 34 / 252 >

この作品をシェア

pagetop