偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
 リアの病室に入ると、リアはベッドから起き上がり、うつろな目をしていた。

「リアさん、お兄様が来てくださいましたよ」

 ポポロム先生は笑顔で接したが、リアは目をすっと横に向けただけで──
 さも興味がなさそうに、視線を戻した。

「リア……」
「アルフレッドさん、リアさんに、声をかけたり、優しく手に触れたりしてみてください。その……抱きしめたりなどは、まだ刺激が強いと思うので、徐々に慣らしていくように……」

 俺は、リアの手にそっと触れようとした。
 しかし、あとほんの数センチというところで、手が震え出した。
 手を伸ばせば、届く距離にいるというのに……!

「ポポロム先生……。俺は……リアに普通に触れることができないんです……」

 本当は抱きしめたい。頭を撫でて恐怖心を取り除いてやりたい。
 それができない。
 リアが拒絶するからではない。俺が、俺が臆病で、卑怯者だからだ……!
 
 苛立ちと自分への怒りで、頭を掻きむしるように爪を立てた。
 
「俺の大切なものを、すべてテオが奪っていく……。テオが……テオがいる限り、俺は……っ!!」

 父が生きている頃はまだ良かった。父が抑制となり俺も自分を抑えることができた。テオとなんとか会話もできていた。でも俺は、父を壁にして結局テオから逃げていたんだ。
 リアを、守れる自信がなくて。
 それなのに、俺は自分の弱さに負けてリアを傷つけて────

「ああああああああああああ!!!!」

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