偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
「こちらが聞きたいくらいです」
「兄であるあなたが、庇ってるんじゃないですか?」
「こっちは肋骨を折られているんです。庇う理由がありません」
「警察では、あなたが共犯者で、弟さんと一緒に義妹(いもうと)さんを襲ったのではないかという話も出てるんですよ。そして、何らかのトラブルになり、弟さんが裏切った……」
 
 本当に、いろんな可能性を考えるものだ。

「違います。俺があの場に行った時は、すでに義妹は……」
「ふう……。まあ、いいでしょう。こちらはテオドールさんの捜索に入ります」

「刑事さん」
「はい」
「テオ……弟は、嘘をつくのがうまいです。決して騙されないよう……」
「まあ、すべて疑ってかかるのが警察ですからね。その辺りはご心配なく。では、失礼します」

 そう言って、ディルク刑事は病室を出て行った。
 最後には冷静になっていたディルク刑事だが、会話から察するにゴンドル族に対してあまりいい印象を持っていないようだ。20年前の戦争を経験した者なら──こればかりは仕方ないのかもしれない。

「ふー……」

 やっと終わった、とベッドのリクライニングに背中を預けた。
 なんとなく、肋骨の傷が疼く。

「お疲れ様でした」
「まさか、自分が疑われていたとは……」
「まあ、それは仕方がありませんね。 警察も、いろいろな可能性を考えるでしょうし。それだけ、 期待できる刑事さんなのでしょう」
「こちらは肝が冷えましたよ」

 俺が逮捕されたら、残されたリアは確実に政府に捕えられる。
 それだけは避けなければならなかった。

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