偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
「あ……。心配ですよね、年頃の義妹(いもうと)さんを預けるなんて……」

 ポポロム先生は、こちらの気持ちを汲み取るように察してくれた。
 
「ただ……。テオドールさんが捕まるまでは、そうした方がいいのではないかと」
「そう……ですね……」
「アルフレッドさんはお仕事があるでしょうし、もしかしたらテオドールさんから、何か連絡があるかもしれません。リアさんは、スマホ番号を変えて匿いましょう。テオドールさんに、知られる事のないように」

 ……俺はずっとリアのそばにいられるわけではない。
 ましてや、俺がそばにいても、また傷つけるだけだ。
 ゴンドル族に理解のあるカルステン氏に任せた方が……リアは安全かもしれない。
 それに、先生も同族だし、その方がリアにとっても都合がいいだろう……。

「わかりました……。リアを……よろしくお願いします……」

 俺は、観念したように頭を下げた。

 その日の夕方、テオが起こした事件がニュースになった。
 テレビでも報道され、ネットでも大騒ぎとなっている。
 幸いなことに、テオが父ダニエルの息子だという事と、リアの実名は報道されなかった。
 父の仕事は政府関係で、ゴンドル族の差別緩和も訴えていたので、もしかしたら、政府から報道規制の圧力がかかったのかもしれない。これに関しては、俺は感謝せざるを得なかった。

 テオは、今どこで何をしているのだろうか?
 あいつのことだ、きっとうまく隠れているに違いない。
 俺は、テオから連絡が来ないことを祈ったが……。

 数週間後、俺のスマホに一通のメッセージが届いた。

『俺を捕まえてみなよ』
< 44 / 252 >

この作品をシェア

pagetop