偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
 ああ、やはり……。
 アルフさんはすでにリアさんへの憎しみの心はなかった。
 そのためアルフさんは今、リアさんに触れることができないのだ……。
 何かを促す時も、触れそうで触れない距離を保っていた。それは、僕が病院でアルフさんの話を聞いてから、ずっと感じていたことだ。

「お兄様……?」

 アルフさんは、しまったという顔をして困惑している。

「お父様は生きていたのに……。私は、まだ恨まれて……ううっ……」

 リアさんは泣き出して、リビングを出て行ってしまった。
 いけない、自我を取り戻したとはいえ、精神的にはまだ不安定なはずだ。

「リアさん……! 叔父さん、アルフさんを頼みます!」
「あ、ああ」

 僕はリアさんを追いかけた。
 リアさんは、叔父の部屋に迷い込むように入って行った。
 数秒だけ様子を見ていたが、泣き止みそうにない。
 まずは、落ち着かせないと……。

「リアさん。アルフさんは、あなたを恨んでるわけじゃないですよ? アルフさんも、いろいろあって混乱してるんです……」
「ううっ……先生……。すみませんっ……」

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