偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
「あら、おはよう〜。アルフレッドさんにリアちゃん」

「おはようございます」
「おはようございます……」

 家を出ると、お隣の奥様がいつものように明るく挨拶してくれる。
 義兄は、にこやかに挨拶を返す。
 私も……懸命に笑顔を作って挨拶をする。

「いつも兄妹仲が良くていいわね〜。うちの子たちなんて、いつもケンカばかりで……」

 お隣さんの、いつもの調子が始まった。

「ええ。リアは本当に良くできた妹で……」

 これも、いつものテンプレート。
 養父が亡くなる前は、これが義兄なのだと、普通だと思っていた。
 けれども今は、体裁を取り繕っているだけのようにしか見えなくなってしまった。

 ああ、本当にもう、外面だけはいいんだから……。



「じゃあな、リア。今日もまっすぐ帰ってくるんだぞ」
「はい、お兄様」

 義兄が、大学の近くまで車で送ってくれたが、降りるなり釘を刺されてしまった。
 でもこれくらいなら、波風立てずに素直に返事をしておいた方がいい。

 私はしばらくその場に立ち尽くし、義兄の車を見送った。
 ……抗えない。
 このまま逃げ出してしまいたいと、何度思ったことか。

 でも。

 ゴンドル族である私には、行く当てなどないのだ──。

 お父様……。
 なぜ、私を助けたのですか……?
 私は、誰にも気づかれることなく涙を流した。


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