偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
「え、えぇ……そうですね……」

 テオさんに警戒がないのは、非常にまずいな……

「では、失礼します……」

「お兄様」

「……!?」

 リアさんは、自分から前に出て、去ろうとしたアルフさんの頬に口づけした。
 不意打ちだったため、先ほどのように払いのけることはなかったが……。

「道中、お気をつけて。またきてくださいね」

「あ、ああ…」

 アルフさんは困惑している。
 ああ、どんなに憎まれていると思っていても、リアさんは、アルフさんに少なくとも家族としての敬愛心は持っている。

 なんて羨ましく、恨めしいことか。
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