偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜

9.5・見つけた。 sideテオドール

 あの時、警察に連絡されたせいで、さすがに堂々と外を歩けなくなった。
 大学の寮にも実家にも、あの秘密基地にも警察が見張っていて戻れなくなったし、ニュースになってしまったので友人を頼るわけにもいかなかった。

 しかし、メガネやカツラ、カラコンで変装すれば、意外とバレないものである。
 数ヶ月経った頃、買い出しのためにあるショッピングモールを訪れた。
 そこで見かけた赤毛の女性──。
 見間違えるはずがない、姉さんだった。

 姉さんは、知らない男の人と一階の食材売り場で買い物をしていた。
 カートを押して、楽しそうに。

 姉さんの隣にいる男は、同じドリンクを棚から3つ取った。
 食材なら買い溜めするかもしれないが、ドリンクを3本という数は中途半端だ。
 二人で暮らしているなら、買い溜めするにしても偶数にならなければおかしい。
 来客ならもっと購入するはずだ。

 誰か、もう一人一緒に暮らしている。
 そう考えた方が妥当だろう。

 それにしても、姉さん。
 なんでそんなに楽しそうなの?

 なぜその笑顔を向けるのが、兄さんじゃないの?

 ダメじゃないか兄さん、姉さんをいじめちゃ。

 兄さんと姉さんが想い合っててくれないとさ──

 俺が、姉さんをあいせない(・・・・・)じゃん……。


< 55 / 252 >

この作品をシェア

pagetop