偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜

 大学での講義を終えると、義兄が近くに車を停めて待っていた。

「リア。やっぱり心配だから、迎えにきたよ」

 友人たちと談笑しながら帰る途中、義兄が現れて、私の心は一気に沈んだ。

「きゃあー! 誰、あのイケメン!」
「えっ? リアのお兄様なの!?」

 友人のジェシーとモニカが、囃し立てる。
 義兄が友人たちの前に現れると、こうなる事は今までにも何度もあった。

 二人は大学で知り合った、私の数少ない友人だった。
 ジェシーは、小柄でかわいいタイプで、モニカは、スラッとしたお姉さんタイプ。
 二人とも、とても気さくで優しい。私がゴンドル族であることは知らないはず……だけど、もしかしたら気付かれているかもしれない、と思う事はある。

「お兄様、今日は友達と帰るから……」

 さっきまで、パンケーキの話題で盛り上がっていたのに。
 地獄に叩き落とされた気分だ。
 
「何言ってるのよ、リア! せっかくイケメンのお兄様が迎えに来てくれたのに!」
「そうよ。あたしたちとは、また大学で会えるでしょ?」

 二人は友人である私より、イケメンの義兄の味方になってしまった。
 お兄様の方こそ、毎日家で顔を合わせているんですけれど!?

「えっ、でも……。私もパンケーキ行きたい……」

 また義兄に反抗しなければならない。友人と一緒なら許してくれないだろうか、などと淡い期待を抱いてしまう。しかし、反抗すればするほど、義兄の圧力は強くなっていくのだ。

「リア」
 
 義兄の、完璧(パーフェクト)体裁用の笑顔(イケメンスマイル)
 知らない人達は、皆この笑顔に騙される。
 義兄は、決して人前で私を貶めたりしない。
 笑顔の裏に、大きな圧力を感じて、私は負けた。

「うう、わかりました……。ジェシー、モニカ、またパンケーキ行こうね」
「君たち、すまないね」

 ジェシーとモニカに笑顔を向けながら、義兄は私の肩に触れて車に乗るよう促した。

「いえいえ! パンケーキは、いつでも行けますから!」

 ああ、もう二人は義兄の虜になってしまっている。
 人の気も知らず、笑顔で手を振ってくれている。

 私は、二人と別れ、しぶしぶ義兄の車に乗った。
 彼女たちは知らない──。
 義兄の本当の顔を。そして、私がこれから()()()()()()()()

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