偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
「ああ、リアちゃん。あたしよあたし。隣のばあばよ」
「えっ、おばあちゃん?」

 スピーカーから聞こえる優しそうな声の主は、数メートル離れた隣の家に住んでいる老婦人のものだった。カルステンの患者の一人である。
 リアは、ポポロムの言葉も忘れて玄関を開けた。
 彼女は、小柄で少々腰の曲がった朗らかで優しい老婦人だった。時々、息子夫婦が遊びに来ているのを見かけたことがあるが、夫に先立たれ普段は一人で暮らしている。

「おばあちゃん、どうしたの? 今日はお父様はいないんだけど……」
「昨日、忘れ物しちゃったのよ。どこかに、ハンカチ落ちてなかったかしら?」
「そういえば──」

 昨日リビングに、綺麗なハンカチが落ちていて、アイロンをかけたのを思い出した。

「はい、おばあちゃん」

 ハンカチを渡すと、老婦人はいつものように、ニコニコと話し始めた。

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