偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
「ありがとうねぇ。リアちゃん、一人でお留守番なの?」
「ええ。今日は、先生もお父様も学会で──」

(“お父様”ねぇ……。かわいそうに)

 事情をカルステンから聞いていた老婦人は、リアに同情の目を向けた。

「どうしたの、おばあちゃん?」
「いいえ、なんでもないわ。後で、おやつの時間になったらお菓子でも持ってきましょうかね」
「わあ、嬉しい。じゃあ、お茶を用意しておきます」

 老婦人は、いつも診察の時にお菓子の差し入れを持ってきてくれる。
 手作りらしく、それがまた最高に美味しいのであった。

「……あっ、今日は誰も入れちゃダメなんだった」

 リアは、ポポロムの言葉を思い出した。

「まあまあ。リアちゃんは不用心ね」
「でも、おばあちゃんなら大丈夫です」
「じゃあ、2時ごろにもう一度来るわね」
「はい、お待ちしてます」

 老婦人が出たのを見て、すぐに玄関の鍵をかけた。

(隣のおばあちゃんなら……いいよね?)

 優しい老婦人の存在で、リアはすっかりご機嫌になり油断していた。

 ピンポーン、と、またインターホンが鳴った。

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