偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
 テオは、いつも通りにこやかに、しかし話は(はぐ)らかした。
 そして、挑発するように口を開いた。

「兄さん。俺、次は姉さんに優しくできそうだよ」

 テオは、リアをこれ以上壊すことは望んでいなかった。

『……やめろ。おまえの狙いは俺だろう? 俺だけを狙え』

「兄さん、何言ってるの? 俺は、昔からそうだったでしょ?
“兄さんが好きなものを好きになっちゃう”って──」

『次、おまえが何かをしたら……俺がおまえを殺す』

「ははっ、やってみたら? ここまで、車で1時間だよ? その間に逃げる時間は十分あるよ。
 じゃあね、兄さん──」

『テオ──!』

 アルフレッドの声は、すでに通話を切られて届かなかった。


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