偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
「リア……。何もされてないか?」

 電話越しに聞こえたテオの言葉が蘇り、アルフレッドは一瞬身震いした。
 そして、こんな時にもリアに触れて安心させてやれない自分を、歯痒く感じていた。

「お兄様……。テオが、連れて行かれて……」

 リアは目にいっぱい涙を溜めて、今にもアルフレッドに泣きつきそうだった。
 
「……っ! こんな時にまで、テオの心配をするな!」

 リアの口からテオの名前が出て、アルフレッドはそこで初めてリアの肩を掴んだ。
 思わず、力が入ってしまう。
 
「だって……急にですよ? サイレンも何もなく、急に警察の方が入ってきて……」
「テオは、逮捕されて当然の事をしてしまったんだ。警察も手を焼いていたから、秘密裏に動いていた」

 アルフレッドは我に返り、リアをぐっと押し離して目を逸らした。
 気を抜くと、また手が震えそうだった。

「おまえが無事で、本当に良かった……」

 義兄の、言葉とは裏腹な行動に、リアは寂しく思った。

 
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