偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
 無粋になるのではと、カルステンは悩んだ挙句、外の空気を吸いに再び外に出た。

「あー、寒っ……」

 この時期の夜は、もう息が白くなるほどだ。
 慌てて来たため上着を羽織ってくるのを忘れたが、取りに戻るのも躊躇われる。

「なんで、俺が気を遣わなきゃいけないんだ……?」

 そもそも、ここは自分の家なのだから遠慮することはない。外に出てくる必要もなかったのではないかと思ったが、やはり気分的に同じ屋根の下にいたくなかった。

「あら、先生、こんばんは」
「こ、こんばんは……」

 声をかけて来たのは、カルステンの患者の一人の婦人だった。
 彼女はこの地域では有名な富豪に嫁いだ人物だ。しかし数年前、主人は病気で亡くなり彼女は数人の使用人と共に、大きな屋敷で暮らしている。
 こんな時間に、きっちりとした格好で、どこかへ出掛けていたのだろうかと勘繰ってしまう。

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