私達離婚しましょう~形だけの妻なのに離婚を申し出たら逆に溺愛されてます~
私は返事をしないまま、勇気君と別れ、車で家に帰った。

誰もいない家。夫の気配は一つもない。

ここに住んでいるのは、私一人なのだ。


翌日私は、区役所に行き離婚届けを貰って来た。

名前を書いて、封筒に入れた。

そして週末、下着と一緒に袋に入れた。


「はい、いつもの着替え。」

「ありがとう。これ、洗濯物ね。」

夫は中身を確認する事なく、着替えを受け取った。

「ねえ、あなた。」

「ん?」

振り向いた夫に、何を言おうとしたのか。

「何でもない。」

「何だよ、それ。」

夫は、笑っていた。笑顔を見たのは、どれだけ振りだろう。


離婚してください。そう言うべきなんだろうか。

私は手を握った。

「何もないなら、行くよ。」

「うん。」

夫の背中を見送りながら、これが最後だと感じた。
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