にこちゃんのペットは王子様!!

5話


○前話のつづき・バイト先に行く途中。

ミニスカ 「アタシ、彼の許嫁なの」
ミニスカ 「庶民が邪魔しないでくれる?」

照  「はあ!? おまえ、なに冗談を――」
ミニスカ 「冗談はあなた様のほうでしょう!?」
ミニスカ 「漫画家になりたいなんてバカな夢ほざいて」
ミニスカ 「家出するなんて、どういうことですか!?」

漫画家をバカな夢と言われて、一瞬うろたえる照。
そんな照に気がついている仁子。

ミニスカは仁子に指をつきつける。

ミニスカ 「彼がほしかったら、アタシと勝負なさいっ!」
照  「だから、彼女を巻き込むなって――」

仁子 「ニコニコの仁子は、仁義の子……」
固唾を呑んで、覚悟を決める。

仁子 「……わかりました」
照  「にこちゃん!?」

仁子 「美甘仁子、その勝負を謹んでお受けしますっ!」

仁子の承諾に、ミニスカはニヤッと。
ミニスカ 「いい度胸しているじゃねーか」


○(照の回想)
こどものころの照。マンガを読んで目を輝かせている。
照M 「初めて読んだマンガの感動が忘れられなかった」

照M 「遠戚の子が忘れていったコミックス」
照M 「その中で描かれていた友情が、恋愛が、学校生活が」
照M 「同世代と対等に接する彼らの日常が」
照M 「とてもまぶしく見えた」
少女マンガイメージ図

照M 「それは、御曹司である俺とはかけ離れた世界」
照M 「決して、御曹司がなれる職業じゃないことはわかっている」

照M 「我ながら、向こう見ずだったことは自覚している」
父親と口論している。その末に、照は部屋を飛び出す。

照M 「鳳来財閥本家の長男……だとしても」
照M 「鳳来から一歩出れば、俺もただの男子高校生」
イメージ図。

照M 「住む場所もなく、食べ物を買う金もない」
照M 「それでも、俺は夢を諦めきれなくて」
1話の雨の中ネームを書いていた照。

照M 「そんなとき、俺は美甘仁子ちゃんに拾われた」
1話で仁子が傘を差しだしたときの回想。

照M 「あの小さな家が、ペットの部屋じゃないことくらいわかっている」
照M 「俺とは、まるで違う世界の住人」
仁子の家と仁子のイメージ図

照M 「誰もが笑った俺の夢を、真剣に応援してくれると言ってくれた女の子」
照M 「ペットとかご主人様とか言って、俺がつなぎ止めてる女の子」
1話のラスト付近の回想

照M 「だけど、本当にそれだけだと思ってる?」
照M 「俺は、あのとき拾われる前から、にこちゃんのことを知ってたよ」

照M 「毎日日の丸弁当を、おいしそうに頬張るにこちゃん」
照M 「とってもかわいいな、て」
お弁当を食べる仁子。それを他の生徒に囲まれながらチラリと見ていた照。
照M 「でも住む場所が違うなって、声をかけられなかったにこちゃん」

照M 「だから、きみが俺を拾ってくれたとき、俺がどんなに嬉しかったか……」
照M 「にこちゃんはきっと知らないと思うけれど」

照M 「だけど……だとしてもね?」
(照の回想おわり)

○翌日の放課後・教室
照  「どうしてこんなことになったんだろう?」

大盛り上がりしているクラスメイトらを背景に、
呆然としている照。

見つめる先は、異様なやる気を見せている仁子とミニスカ。

ミニスカ 「三番勝負だ、異論はないな!?」
仁子 「はいっ!!」

黒板には『照様争奪戦 第1回戦:料理対決!!(達筆)』と書いてある。

亜子と実子が、照に詰め寄る。

亜子 「なぁ王子、こりゃどーいうことだよ!?」
実子 「こーいうのって、女を取り合うために男が対決するものじゃないの?」
照  「……ごめん」

実子 「てか、そもそもさぁ……」
何かを言いかける実子。
だけど、勝負が始まる。

ミニスカ 「30分以内に照様が満足する一品を作れ!」
ミニスカ 「ちなみに、昨日のぎょうざを作ったのはアタシだ」
ミニスカ 「簡単に勝てると思うなよ?」にやっ

仁子 「昨日はごちそうさまでした! すっごくおいしかったです!」おめめキラキラ

仁子の素直なお礼に、一瞬たじろぐミニスカ。
ミニスカ 「……おう」照れてる

ミニスカ 「それじゃあ、料理開始だ!」

30分後。
照の前に置かれる、おしゃれパスタ&スープと、ふつうの親子丼&味噌汁&おひたし。

両方をもぐもぐと食す照。
照が親子丼のほうの旗をあげる。

ミニスカ 「なぜだ!? アタシのほうが洒落てたでしょ!?」
照  「授業のあとだからさ、お腹空いてたんだよね」
照  「丼もののほうが、食べ応えあるじゃん」

贔屓じゃないよ、とあっさり答える照。
悔しがるミニスカ。「ふんっ」と次の勝負に気合いを入れる仁子。


○教室

黒板 『第2回戦:計算100問早解き勝負!!(達筆)』

ミニスカ 「照様の相方が、バカじゃ務まら――」

目にも止まらぬ爆速で、すべて解く仁子。
仁子ちゃんの手を「WINNER」と持ち上げる無表情照。
仁子のもう一方の手には、満点の答案用紙。
涙するミニスカ。

実子 「ま、特待生は伊達じゃないってことね」


○校庭

ホワイトボード『第3回戦:格闘対決(達筆)』
砂煙が立ちこめる中、仁子(体操着)とミニスカ(上は体操着だけど、下はミニスカのまま)。

ミニスカ 「照様のおそばにいるからには」
ミニスカ 「いついかなるときでもテル様の安全を確保しなければならない!」

ミニスカ 「先に背中か膝をついたほうが負けだ、いいな!」
仁子 「はいっ!」

亜子 「ちょっと、三番勝負ならもうにこちゃんの勝ちだろ!」
仁子 「いいんです!」
仁子 「私が勝負したいんですっ!」

仁子 「私は……決めたから」
仁子 「照くんの夢は、誰にも邪魔させない」

仁子 「だからこの勝負、私が勝ったら照くんの夢を応援してあげてください!」
仁子 「お願いします」

真剣なまなざしでミニスカを見つめる仁子。
ミニスカ、一瞬黙るも、すぐに声をあげる。

ミニスカ 「おめぇが勝てるわけじゃないだろ」

一直線に距離を詰めてくるミニスカ。
仁子は腕と胸のあたりの服を掴まれるも、何も対応はできない。

このまま足を払われそうになったとき、
ガバッと照が仁子とミニスカを引き離す。

仁子 「照くん……」

照、ミニスカを背負い投げ。
背中をついたミニスカを、冷ややかに見下す。

照  「女に手を挙げるとは最低だな、政臣(まさおみ)」
ミニスカ 「誰もほんとに戦うつもりはねーよ!」
ミニスカ 「ちょっと脅せば、逃げるかと思って」
照  「逃げなかったら?」
ミニスカ 「くすぐる?」手をわきわき

仁子 「……まさおみ?」目が点&小首かしげ

そんな仁子の肩を、実子が叩く。
実子 「にこちゃんは去年も違うクラスだったから知らなかったかもだけど」

実子 「あれ、明智政臣(あけち まさおみ)」
実子 「名前の通り、れっきとした男」

仁子 「え……ええええええええ!?」
びっくりする仁子。

政臣、無表情の照にくすぐられて悶えている。
「ぎゃははは」暴れる政臣のスカートの下には、男らしいパンツがちらり。

仁子 「じゃあ、なんでスカート……?」
政臣 「こんな美脚、世に晒してやらないと勿体ねーじゃねーか!!」
仁子 (なんて理屈????)

仁子 「そ、それに、照くんの許嫁って……」あわあわ仁子。
照  「こいつの悪い冗談だよ」

やれやれと立ち上がる照。
照  「政臣は俺のSP……代々付き人兼護衛役をしてくれている」
照  「鳳来の分家の者だ」ども、と手をあげる政臣。

仁子 「だったら、もっと早く説明を――」
照  「しようとしたよ! だけど、にこちゃん」

照  「昨晩はずっと精神統一するとか言って、話を聞いてくれなかったじゃないか!」
回想イメージ図。
仁子の家で、座禅を組む仁子。おろおろする照。

亜子&実子「昨晩????」照をジトッと睨みつける
照  「言い間違いです健全ですキスすらまだです!」慌てて否定
仁子 「キス……!?」

びっくりして口を両手で押さえる仁子。
そんな仁子の手を、ゆっくりはがす政臣。

政臣 「だけどおめぇ、根性あるじゃねーか」
政臣 「気に入った」
そしてそのまま、仁子の手の指にキスする政臣。
男らしい表情で、口角をあげる。

政臣 「照様ではなく、オレの女になれ。美甘仁子!」
仁子 「えっ??」

5話、おしまい。
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