君のいない明日を君と生きる
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昨日夏祭りがあっただなんて微塵も感じないほどいつも通りの午後一時。今日も会う約束はしており一時に迎えに来ると言われていたが、チャイムが鳴る気配はない。
少し遅れることくらいあるしちょっと待とう
リビングのソファーでテレビを見ていたお母さんの隣に腰掛ける。
「湊斗くんが早めに来ないなんて珍しいね。紬が無理やり付き合わせてるんじゃないでしょうね」
「無理やりじゃないって」
お母さんにも湊斗のことは言っていない。夏休みになってからほぼ毎日家まで迎えに来る湊斗にお母さんは首をかしげながらも、湊斗を気に入っているお母さんは私のわがままに付き合わされていると思っている。十分を過ぎても来ない湊斗が心配になりメッセージアプリを開く。
「あれ……」
昨日会話したばかりで上の方にあるトーク画面をタップするとメッセージが送れなくなっている。アイコンに設定されていたサッカーをする写真も、フルネームで登録されていた名前も今は表示されない。
消した、ってこと……
急いで自室に駆け込み悠真くんに電話をかける。背後でそうしたのか心配するお母さんの声が聞こえたが反応することはできなかった。五コールなっても出ない電話を一度切り、またかける。これを数回繰り返しもう一度かけようとしたときに悠真くんからの着信を受ける。
「もしもしっ、湊斗が……」
すぐにボタンをタップし電話に出ると私の声に被せて悠真くんがかすれた声を出した。
「湊斗が死んだ――」
手にしていたスマホを床に落とすと同時に足の力が抜け膝から崩れ落ちる。繋がったままの電話から聞こえる悠真くんと心配で様子を見に来たお母さんの声がするが何を言っているか頭に入ってこないまま、私は嗚咽交じりの涙が止まらなくなっていた。いつの間にか切れていた電話にも気づかないままお母さんに肩を抱かれたまま気を失った。