君のいない明日を君と生きる

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『今年は全国的に平年より気温が高く、暑い夏になりそうです』

 クーラーをガンガンにつけたリビングのソファーに寝転びながらスマホをいじっていると、付けっぱなしのテレビからアナウンサーの声が聞こえてくる。

そりゃあ、こんなに暑いわけだよね

 外を見ると雲一つない青空が広がっており、窓から入る強い日差しにため息が出る。

こんな暑い中、湊斗たちはサッカーしてるんだな

 夏休みに入り滅多に学校に行かなくなった私に比べ、湊斗たちはほぼ毎日部活で学校に行っている。美術部は夏休みも変わらず活動は自由で、「美術室はずっと開いてるから好きな時に使っていいよ」と顧問が言っていた。夏休みに入り一週間が経つがまだ一日しか私は学校に行っていなかった。
 夏休みにしては早めに起きてしまい暇を持て余しているとスマホが震え美咲からのメッセージが通知される。通知をタップすると『起きてるー?今日暇?』と表示され『おはよ。暇すぎる』と返信する。五秒もしないうちに既読になり『十時半 美術室』とだけ返ってくる。

コンクールの作品、終わってないって言ってたもんな

 八月末締め切りのコンクールだけは美術部全員が提出するように言われており、その作品をみんな真剣に取り組んでいた。前回学校に行った日に私は何とか終わらしたが、美咲は終わりそうにないと嘆いていたのが思い出される。『了解!』とキャラクターがグッドサインをするスタンプだけを送り、ソファから体を起こす。数日ぶりに制服に袖を通すと湊斗が迎えに来てくれていた一週間前がひどく懐かしく感じた。

***


「うわぁ、美術室も暑いなー」

 十時半を少し過ぎ学校に到着し、美術室の扉を開けるとムワッとした空気が正面から来る。

「紬、おはよう。先生に聞いたらクーラー壊れたって......」
「えー」

 先に着いていた美咲が美術室の窓を開けながら振り返る。開けた窓からは屋外で部活をする運動部の掛け声や吹奏楽部の練習の音が入ってくる。

「皆、頑張ってるね」

 途端に強く吹いた風に揺らされた髪を抑えながら美咲は一瞬外に目をやる。そのまま教室の端にまとめて寄せられた椅子をひとつ移動させ荷物を広げ始める。

「ねー。美咲はもうすぐ作品できそう?」

 問いかけながら私も美咲に倣い椅子を運び少し離して隣に腰を掛ける。イーゼルにセットされたキャンバスを見れば色鮮やかな海の生き物たちがキャンバスいっぱいに泳いでいる。美咲の描くものは生物が多く、彼女の活き活きとした色使いは目を惹かれる。

「何とか今日中に終わりそう」
「よかった。私も自由にしとくから気にせずファイト!」
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