一般生徒禁制!?男子だらけの『月虹学園・生徒会花園寮』
プロローグ
日本全国から様々なエリートが集まる『月虹学園』。中等部と高等部からなるこの学園に通う私、高等部1年生の高辻渚沙。
高等部に進級して2か月経った6月中旬の今日。
いつも通り学校に登校すると、私の行く道を塞ごうとする1人の大人が突如現れた。
昇降口に向かいたいのに。
私の目の前に立っている大人は、両手を広げて道を塞いでいた。
「……鷹宮先生。邪魔です」
「高辻さん、ご機嫌よう」
「邪魔ですって」
目の前の大人……高等部国語教師の鷹宮琉唯、28歳。私より13歳年上の従兄妹だ。
月虹学園に入学するまでは『お兄ちゃん』と懐いていた私だが、ここに入学すると話は変わる。鷹宮先生はイケメンで生徒からも大人気。だから、鷹宮先生と私が従兄妹だということを知られたくなくて、本当に必要最低限の関わりしかしていない……のに、どうして私の目の前で道を塞いでいるの!?
「高辻さん、どうしても僕に付いてきて欲しい……!」
「いや……あの、その理由を話して貰っても良いですか?」
「理由はあとで!! とにかく、今すぐ!!」
「始業に間に合わなくなるから嫌です!!」
「大丈夫、担任の先生には理由を説明して、遅れるってこと言ってあるから!!」
「根回し済み!?」
あまりにも大きな声で会話をしすぎた。
登校して来る他の生徒たちが、私と鷹宮先生の方を険しい表情で見つめてくる。
怖い怖い、特に先輩方の目が怖いんだ……。
だから大人気の鷹宮先生とは関わりたくなかったのに!!
「ほら、なぎちゃんが騒ぐから余計に目立つの。大人しく付いてきてよ!」
「学校でそう呼ばないで!?」
諦めて鷹宮先生に付いて行くことに決めた私。
昇降口から校舎内に入って、教室棟とは反対の方向に歩いて行く。
「鷹宮先生、どこに行くんですか」
「着いたら分かるよ。急ぎなんだ!!」
「意味わかんないんだけど!」
ちょっとだけ小走りでひたすら鷹宮先生の後ろを歩いていると、特別教室棟に辿り着いた。
その棟の5階……階段を上った先に見える“一般生徒立ち入り禁止”の看板。
特別教室棟の5階って……高等部生徒会のフロアじゃなかったっけ……!?
「え、待ってお兄ちゃん。ここって生徒会……」
「あぁ……なぎちゃんが久しぶりに“お兄ちゃん”って呼んでくれた……!」
「あっ、訂正。鷹宮先生っ!!! とにかく、どういうことですか!? 何で生徒会!?」
「生徒会室に着いたら説明するよ」
高等部生徒会。
エリートが集まる『月虹学園』の中でも、更に秀でた超優秀な生徒が所属できる。要は……エリート中のエリート集団。
現在の生徒会執行役員は会長、副会長、会計、監査の男子4人。そしてこちらも一般生徒から大人気でファンクラブが存在するほどのイケメン。もうね、生徒会って本当に別次元。テレビの中のアイドルを見ているかのような感じなんだけど……。何で私はそんな生徒会のフロアに足を踏み入れているのか!?