一般生徒禁制!?男子だらけの『月虹学園・生徒会花園寮』
酔っ払った鷹宮先生を自室に放り込み、訪れる生徒だけの時間。
トランプで遊び始めた久遠先輩と矢神先輩を横目に、私はウッドデッキに出て夜風に当たる。しばらく遠くに見える街の灯りを眺める。するとそんな私の様子に気が付いた一ノ瀬先輩も、ウッドデッキに出てきた。
「高辻さん、大丈夫?」
「一ノ瀬先輩……ありがとうございます。大丈夫です。少し、疲れてしまっただけです」
「……まぁ、生活環境も変わるからね。引っ越しのこともあったし、疲れがでるのも当然だと思う」
一ノ瀬先輩は小さく息を吐きながら私の隣に立った。すると、突然誰かのスマホが鳴り始めた。誰か、と言っても私か一ノ瀬先輩しかいない。私のスマホではないということは……一ノ瀬先輩だ。
先輩は少し怪訝そうな顔をして「ごめん、電話」と言って少し離れた。
そして聞こえて来る、先輩の声。先輩は「無理だって。もう切っても良い?」なんて言葉を繰り返しながら、適当な相槌を打っていた。
電話を終え戻ってきた先輩は、不自然に口角を上げながら私の隣に立つ。何も言わずに街の灯りを眺める先輩に、つい声が漏れ出た。
「だ……大丈夫ですか」
「うん、大丈夫」
それ以上、一ノ瀬先輩は何も言わなかった。
静かに2人……無言で街の灯りを眺め続けた……。
すると、ふいに開いた扉。その音に振り向き体を向けると、そこにトランプを終えたのであろう久遠先輩と矢神先輩が立っていた。2人も外に出てきて、それぞれが一ノ瀬先輩の体をツンツンとつつく。「やめろよ」なんて呟きながら満更でもなさそうな先輩の様子。
「何、礼央ったら抜け駆け?」
「一ノ瀬先輩も不穏ですか……」
「違うよ。高辻さん、疲れたみたいだから。お話を聞いていた」
小さな虫の声だけが響く夜。
今日から始まる寮生活に少しの不安を覚えつつ。
何故かそっと私の肩に腕を回した一ノ瀬先輩に、言葉にならない疑問を抱いていた。