繋いだ手は離さない
 それが紛れもなく愛情表現だからだ。


 体をくっつけて抱き合い、込み上げてくる愛を確かめ合った。


 互いにまだ青臭い学生の身だ。


 だが、不思議なことにボクも愛理香も相手の心中が分かるぐらい、通じ合っていた。


 二〇〇七年の冬も過ぎ、春がやってくる。


 いよいよあと一年で、大学卒業だ。


 三年間お世話になったキャンパスとももうすぐお別れである。


 ボクは授業の合間に原稿を書き続けていた。


 どうしても夢を捨てきれない。


 これはやっと二十代に入った、まだまだ勢いのある男性の特徴だろう。


 ボクは愛理香が缶詰で院の試験勉強をしているのを邪魔しないようにして、週末、彼女が受験勉強をしていないときを狙って会っていた。


 キャンパス内には桜が咲き始めている。

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