繋いだ手は離さない
 そして家庭裁判所、いわゆる家裁で母が裁判離婚の申し立てをし、それで離婚が正式に認められた。


 離婚は無事成立し、ボクと妹の親権は母側に与えられることになる。


 ボクはあれからもう、オヤジの顔を見たことがないし、第一見たくもない。


 それぐらい、母もボクも妹もオヤジを心底嫌っていたのだ。


 母はそれから地元の町にある会社に入社して、フルタイムで働き始めた。


 ボクと妹を育てるために、だ。


 ボクは母に今でも相当感謝している。


 奨学金を借りながらとはいえ、大学の学費を一部出してもらって、おまけに生活費まで送ってくれている母に対し、いずれは何らかの形で親孝行したいと思っていた。


 逆に今はその手の人間が入所する施設に入れられたオヤジとは二度と会いたくなかった。


 もう、おそらくこのままなんだろうなと思っていたし、実際その通りなのだ。


 一方で、実家が造園業をやっている愛理香も、実は家庭内にトラブルを抱え込んでいたらしい。

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