繋いだ手は離さない
ながら、あちこちを見て回る。


 高北大のキャンパスをグルッと一周し、ボクたち二人は掲示板で今後の日程を確認した。


 卒論はすでに出してあったので、後は四年生の後期の試験が終わって単位を取れば無事卒業だ。


 ボクも愛理香も気楽だった。


 もう卒業が決まったようなものだからだ。


 そして愛理香は学校に残り、ボクは皆を楽しませる小説の書き手となるつもりでいた。


 互いに進路を決めていて、もう迷うことはない。


 ボクたち二人は、雪が降り積もっている町を歩くと、そのままもう一度ボクの部屋へと舞い戻った。


 年末は二人きりで過ごすことにしていた。


 お互いもう大人だ。


 いいことも嫌なことも、過去は全て忘れてしまいたい。


 ボクは年明けに発表となる新人賞の原稿を書いて、すでに送付していた。
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