繋いだ手は離さない
 ボクも愛理香も大勢の学生が集まっていた式場を後にして、学科の学生が集まる研究棟に移動し、そこで個別に記念式典が行われるのを待っていた。


 卒業生たちが徐々に集まり出し、皆が楽しいムードになる。


 その式も終わり、卒業証書を受け取ったボクたちは、なぜかしら会場を抜け出して、キャンパスを突っ切った。


 三月で木々が色付き出している。


 愛理香が、


「今から一緒に過ごそうよ」


 と言って、大学のある通りを抜け、ボクのアパートのある方向へと向かう。


 部屋に辿り着くと、春だからか、ボクは肌に薄っすらと汗を浮かべていた。


 愛理香も着物が窮屈だったらしく、脱いでしまい、Tシャツ一枚になる。


 そしてボクに向かい言った。


「キスしようよ」


「ああ」
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