繋いだ手は離さない
 そう思えると気分が楽になる。


 だが、ボクは賞を主催した出版社が四月に出す文芸雑誌に名前が載ることを暗に期待していた。


 そう、高田幸人というペンネームが雑誌に掲載されることを……。


 雑誌発売まであと二週間だ。


 長いようで短い二週間だった。


 その二週間を経て、ボクにも遠いようで近い春が訪れるのだ。


 二週間後、ボクは発売された雑誌を書店で手に取り、中をパラパラと見て、新人賞の発表欄に自分のペンネームが載っているのを見つけ、初めて報われた気がした。


 春は来たのだ。


 愛理香もすでに大学院の試験に通っていて、四月からは院生だった。


 それぞれの歩む道が決まる。


 愛理香は学術畑、ボクは創作畑だった。


 だが、ボクたち二人の愛の物語はまだ終わっていない。
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