繋いだ手は離さない
最終章
     FIN
 ボクと愛理香は互いに違う道を歩み始めた。


 だが、彼女もボクと畑違いの事をしてはいても、根はほとんど同じなのだ。


 同じ人文系のものを研究したり、作ったりすることは非常に似通っている。


 そして愛理香は週末、研究室が休みのときはボクの部屋に遊びに来ていた。


 ボクの部屋は小説を書くために揃えた資料などが山積みされ、掃除も思うように行き届いていない。


「もぉー。もっと綺麗にしないと」


 愛理香がそう言い、執筆に関係のない文芸雑誌などを片付け始めた。


 ボクは彼女が片付ける様子をじっと見つめている。


 愛理香はボクが掃除が不得意なのを知っているのだ。


 五月上旬の晴れ亘った日で、ゴールデンウイークだからか、彼女は部屋の窓を開け放ち、掃除機を掛け始める。


 ボクはキッチンで二人分のアイスコーヒーを淹れて、冷蔵庫で冷やしていた。
 
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