繋いだ手は離さない
「そう?何もないんだけど」


「うん。それがいいんじゃない」


「そうか?」


「そうよ。だって学生の一人暮らしのアパートなんだから。生活感がある方がいいわ」


「まあ、確かにそう言われればそうなんだけどね」


「じゃあ、お邪魔しまーす」


 愛理香がそう言い、履いていたブーツを脱いで、室内へと入っていく。


 ボクも追って入り、窓を思いっきり開け放つ。


 三階建てのアパートの三階に部屋があるので、窓からは外の景色が見えている。


 目に映る町の光景がとても綺麗で、ボクたちはしばらくの間、それにじっと見入っていた。


 やがてボクが、


「コーヒー飲む?」

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