繋いだ手は離さない
 今思えば、その日は暑さが妙に記憶に残っている春の一日だった。


 それから約三ヶ月が経ち、七月となった。


 暑い夏とともに、まさに恋の季節の到来である。


 蒸すような暑さの中、恋人たちが海岸で戯(たわむ)れるシーズンだ。


 ボクたちも例外なく、互いに授業が一コマも入ってない日に近くの海まで泳ぎに行った。

 幸い、運転免許を取ったばかりだったボクは、自分の車に愛理香を乗せて、海岸まで運転した。


 紫外線対策に度の入ったサングラスを掛けたボクが、ハンドルを握る。

 
 脇下にはデオドラントを軽く振っていた。


 鼻に衝(つ)かない程度に、だ。


 ボクたちはビーチに着くと、パラソルを一つ陣取って、そこで寛ぎ始めた。


 飲み物にアイソトニックウオーターを用意していて、それを飲みながら水分補給する。


 汗がダラダラと出てきて、ボクたちは暑さで参りそうだった。

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