繋いだ手は離さない
楽を覚えていた。

 
 ボクは思っていた。


「きっと車内じゃ、乱れちゃうんだろうな」と。


 そしてそれが実際その通りになる。


 カーセックスという言葉が半ば死語になり掛けている時代に、ボクたちはその行為を堂々と車内でした。


 車の中の狭苦しさと、その日の異常なまでの蒸し暑さが、ボクたちに積極的なセックスをさせる動機だったのだ。


 単純だが、明快なのである。


 欲に任せて満たし合う――、それはいつの時代の男女でも一緒で、変わってはいない。


 ボクたちはセックスが終わった後、天井を開けて、綺麗な星空を眺め出す。


 星の光に照らされるようにして、その日は終わった。


 言わずもがなの車中泊である。


 しかも若い恋人同士で……。
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