繋いだ手は離さない
 ボクも愛理香もゆっくりと呼吸しながら、海岸沿いを歩いていく。


 しっかりと手を繋ぎながら……。


 七月のビーチは朝で一日が始まったばかりだというのに、とても賑やかだった。


 すでに多数の客が来ている。


 ボクたちは歩きながら、話をし合った。


「俺思うんだけどね」


「何を?」


「俺さ、君と付き合えてる今が一番幸せだな」


「そう?」


「うん。だって、俺、一応帰る家あるけどさ、母さんが気の毒だからな。あんなアル中のオヤジに暴力振るわれてたわけだからね」


「でも、あたしの家だって、母の不倫が原因で離散しちゃったのよ」


「まあ、お互いにいろいろと抱え込んでるってわけか?」


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