繋いだ手は離さない
「うん。そういうこと」
 

 愛理香が頷き、ボクたちはいったん不愉快な状態に陥っていたのを振り払うようにして、歩き続ける。


 一通り海岸沿いを歩いて回ると、ボクたちは露出してすっかり焼けてしまった肌を隠すようにしながら、車へと戻る。


 ボクも愛理香もお互いの状況を振り返ってみながら、車に乗り込む。


 車内は熱かった。


 やはり夏らしく熱がこもっているのだ。


 そしてボクはアクセルを踏み込む前に、愛理香の方を見つめながら、ゆっくりと一つキスした。


 された方の彼女も照れていて、ボクたちはそのまましばらくの間、口付け合う。


 ゆっくりとした時間が過ぎていった。


 ボクたちは愛を確かめ合う儀式を終えると、車を出して、町へと戻る。


 ハンドルを握りながら、ボクは昨日から着たままだったTシャツに汗染みが出来ているのが分かった。
< 33 / 124 >

この作品をシェア

pagetop