繋いだ手は離さない
 着ているシャツが汗臭いのも青春の証なのだ。
 

 ボクたちは町へと戻りながら、ギラギラとした紫外線を浴び続けた。


 隣には大事な愛理香がいて、海沿いに目をやっている。


 ボクは運転しながら、時折信号で停まると、持ってきていたペットボトルに口を付けた。


 冷えてはいないのだが、喉が乾くときはこういった生温(なまぬる)いものでも一向に構わないのだ。


 ボクはペットボトルに口を付けると、後部座席に置き、再び運転に専念する。


 ブーン……。


 燃費のいい小型車はボクたちが普段住んでいる町へと向かう。


 助手席の愛理香は暑さで参っているのか、幾分言葉少なになった。


 ボクがふっと脇を見ると、彼女は眠ってしまっている。


 遠出で車中泊までしたので、疲れがどっと出てしまったのだろう、ボクは町に着くまであえて愛理香を起こさないようにした。


 ボクたちの目の前には夏の扉が開いていて、その向こうには愛や恋の楽しさがたくさんある。
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