繋いだ手は離さない
 あまりベタベタとくっついてばかりいると、いくら恋人同士とはいえ疲れてしまうので、ボクも愛理香もその辺りは十分心得ているつもりだ。


 そして七月が終わり、約束の期日である八月十日が訪れた。


 申し合わせて、互いに都合のいい日を選んでいた。


 ボクも愛理香も山に行くための準備をして、彼女が二人分のお弁当とおやつを用意し、揃って遊びに行く。


 実は町の裏に小高い丘があって、そこから町が一望できるのだ。


 山は高さにして五十メートルぐらいで、周辺をドライブしたとしても、そんなにガソリンを食うわけじゃない。


 それに愛理香は実家を出た後、植物から遠ざかっているからだろうか、かなりの程度、緑を見たいらしい。


 ボクもその辺りの事情を察しているので、あえて彼女を山のドライブに誘ってみたのだ。


 幸いにして、その日の天気は晴れだった。


 ボクたち二人は車に乗り込み、山間部の隘路(あいろ)を軽く走って、それが終わると、一路山の頂上を目指す。

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