繋いだ手は離さない
 と訊いてきた。


「ああ。君の体が俺にとっては初体験だったんだから」


「えっ?もしかして、それまで経験なかったの?」


「うん。言うのも恥ずかしいんだけどな」


 ボクがそう言って思わず笑い出す。


 心の中にあった蟠(わだかま)りが消えた。


 そう、ボクの童貞を奪ったのは、目の前にいる愛理香本人だったのだ。


 彼女がボクを一人の男にした。


 そしてボク自身、愛理香を通して、男女の交わす情愛の愉(たの)しさや悦(よろこ)びを知ったのだ。


 ボクも愛理香も普通に付き合えてはいたが、このことだけは実際問題、隠し通しておきたいことだった。


 だが、会話するうちに本音が漏れてしまうのがカップルというものだ。


 ボクは自分の初体験の相手が愛理香であることを赤裸々に告白した。

< 45 / 124 >

この作品をシェア

pagetop