繋いだ手は離さない
 髪の毛がすっかり乱れていて、ちゃんと整髪しないと、とてもじゃないが外には出られない。


 おまけにスッピンだ。


 メイクしてない愛理香もボクは好きなのだが、彼女は化粧すると変身したように綺麗になってしまう。


 それが成熟期を迎えた女性なのだ。


 ボクはその寝ぼけ顔に声を掛ける。


「おはよう」


「おはよー……」


 愛理香は語尾を幾分曖昧にしたまま、挨拶を返す。


 だが、ボクが淹れていた、まだ冷めていないホットコーヒーを啜り取ると、いきなり表情が変わった。


「今日も頑張らなきゃ」


 愛理香はコーヒー一杯で気持ちが切り替わってしまうぐらい、単純な女の子なのだ。




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