繋いだ手は離さない
“コイツは俺とばっちり合ってる”


 そう素直に思えてしまうぐらい、彼女はボクと呼吸が合っている。


 ボクは性交しながら、考えていた。


 ボクたち二人が付き合い始めたときから今までを、だ。


 それはかなり前に遡(さかのぼ)る。


 ボクと愛理香が出会ったのは、二人が在籍する高北(こうほく)大学人文学部に入学した、今から三年ちょっと前だ。


 四月らしくキャンパスのあちこちにはちょうど桜が咲いていた。


 入学式の後で、学部長である教官がやけに長く、面白くない話をしたのを今でも覚えている。


 ボクと愛理香はその席でたまたま隣り合わせになった。


 互いに惹かれ合うものがあったのだろう。


 ボクの方から声を掛けてみた。


「あのー……」
< 5 / 124 >

この作品をシェア

pagetop