繋いだ手は離さない
 その日は夜の午後九時過ぎまでボクが愛理香の家にいて、互いに性的にすっかり満たし合った後、ゆっくりとし始めた。


 ボクたちは十分分かり合えているのだ。


 お互い、どんなことをすれば悦び合い、愉しみ合えるかを。


 性交し終えた愛理香はベッド上でゆっくりと喘ぎながら、絶えず息を吸い込み、ゆっくりと荒い息を抑え込んだそれへと変える。


 そしてボクたちはその夜別れ、ボクが自室へと帰って、一応パソコンを開き、メールなどをチェックした。


 その後、書き掛けだった恋愛小説に取り組む。


 原稿用紙で三百枚ほどになりそうだった。


 ボクはその原稿を自分のブログでは公開せずに、新人賞に応募することにした。


 その夜、話の終末に若干書き足して、データをいったん保存し、改めて明日以降推敲することに決めた。


 小説の原稿は一時にパーッと書くのだが、ある程度時間を置いて推敲し、その段階で前後の脈絡(みゃくらく)の乱れや、明らかに粗と思えるものがいろいろと出てくるものだ。

< 52 / 124 >

この作品をシェア

pagetop