繋いだ手は離さない
 ボクはそれを意識しながら書き綴っていた。


 学生の恋愛でも大人同士の恋愛でも、ベースは一緒だ。
 

 普段から交わしている口付けの数で決まる。


 ボクはその夜も愛理香を抱きながら、飽きるまでキスを交わした。


 何度も何度も唇を重ね合わせ、キスを繰り返す。


 そして寒い季節だからか、ボクはいつしか彼女と同じベッドで寝入ってしまう。


 朝まで熟睡した。


 目が覚めると、すでに愛理香が起きて、薬缶をガス台に掛けている。


 これから熱々のモーニングコーヒーを淹れるためだろう。


 ボクたちは本当にお金がなくて、豪華な料理を食べたり、派手に遊びに行ったりすることは出来なかったのだが、普通に二人でいれるだけでも十分幸せだった。


 だが、その日、ちょうど互いに一コマも講義が入っていなかったからか、愛理香が、


「あたし、冬の海が見たい」

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