繋いだ手は離さない
「何ですか?」


「この話退屈だと思いません?」


「ええ、まあ……」


 愛理香は曖昧(あいまい)な頷き方をした。


 だが、ボクは確信するに至る。


“おそらく、この子もそう思ってるんだろう”


 ボクたちは互いに申し合わせ、二人して自然と立ち上がり、ゆっくりと講堂の外へ出て、そこで春の新鮮な空気を思いっきり吸い込んだ。


「お名前何て言うんですか?」


「あたし?あたし、笹井愛理香。……あなたは?」


「ボクは河下純平っていいます」


「河下君ね。でも呼びにくいから、純平でいい?」


「ええ。……ボクも笹井さんのこと、愛理香さんって呼んでもいいですか?」

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