繋いだ手は離さない
 と言い出した。


「海?」


「うん。夏の海はいいけど、冬の海も見てみたい」


「じゃあ行こうか?」


「ええ」


 愛理香が頷き、ボクたちのその日の海岸デートが決まった。


“冬の海は冷たいだろうな”


 ボクはそう思いながらも、一度決めた約束を破るわけにもいかないので、彼女をボクのアパートまで連れていき、助手席に乗せて、海岸まで車を出した。


 おそらく冬の海は幻想的だろう。


 打ち寄せる波は一際静かで、砂も夏のそれのように熱くはなく、手で触ったとしてもあまり抵抗がないだろうと思われた。


 ボクも愛理香同様、期待していた。


 冬場の海の美しさに。

 
 
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