繋いだ手は離さない
 ボクはコーヒーを彼女に手渡すと、自分もプルトップを捻って開け、ゆっくりと呷り始めた。


 二人で冷たい冬の海を見ながら、やがて来る春を待つ。


 十一月の海にじっと見入っていた。


 そしてそれから駆け足のようにして五ヶ月が経ち、新年度がやってきた。


 ボクたちは無事進級し、二年生になったのである。
 

 一年の後期試験が終わってから、三月に成績発表があったが、ボクも愛理香も単位は一つも落としていなかった。


 ボクはどちらかというと講義自体はいい加減で、もっぱら愛理香の方がノートを取っている。


 彼女は優等生なのだ。


 ボクとはまるで対照的に……。


 そしてボクは試験前になると、愛理香にノートを借りて、コンビニのコピー機でコピーし、それをノートに貼り付けて、試験に臨む。


 彼女は授業をサボり気味な女子生徒の代返をしたり、出席カードを書いたりするなど、
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