繋いだ手は離さない
 ボクも愛理香も受講前からすでにアレルギーが出ていた。


 大学というのは広い場所なので、そういった教官もいるにはいるのだ。


 ボクたちは先輩たちから前評判を聞いて知っていたので、尚更、羽野の講義が嫌いだった。


 だが、所詮は一コマ九十分の授業を聞くだけだ。


 しかも週一である。


 上手いことズル休みして、同級生に頼んで出席カードだけ出し、欠席する方法もあった。


 要は必修の授業でも単位だけ取ろうと思えば、取ることが出来るのだ。


 ボクたちは顔を見合わせながら、互いに上手いことやる方法を考えていた。


 こういった場合、どうしても悪巧みが先行してしまう。


 夕方になると、ボクたちは食べ終えたお弁当の容器を仕舞って、山を降りる準備をし、ゆっくりと歩き出す。


 繋いだ手は熱を伴って、幾分熱いぐらいだった。


 だが、不思議と離したいとは思わない。
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