繋いだ手は離さない
 そして大学二年は終わり、三年を迎える。


 三回目にキャンパス内の桜を見つめることとなった。


 幸い、ボクは必修以外で少し単位を落としたものの、ちゃんと進級できた。


 愛理香はやはり優等生で、全部の科目で八十点以上取っていて、オール優だった。


 高北大は未だに成績を付ける際は、優・良・可・不可の四段階で査定している。


 ボクは可ばかりだったが、それはそれでよかった。


 別に大学の成績が自分の将来目指す職業に直接関係しないからだ。


 むしろ、作家という人種は学生時代はパーッとしない人間の方が多い。


 ボクもどうやらその一人のようだった。


 それにそんなことよりも、ボクは愛理香との時間を大切に過ごしたいと思っていた。


 キャンパスに咲き誇る桜は咲き始めたかと思うと、雨が舞い落ち、すぐに散ってしまう。


 桜の後は若葉が萌えていた。


 新緑が眩しい季節にボクたちはいつものカフェテラスでコーヒーを飲みながら、寛ぐ。
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