繋いだ手は離さない
 時間が経つのが早い。


 あっという間に梅雨時を抜け、ボクたちは真夏が訪れつつあるのを感じ取っていた。


 連日蒸すように暑い。


 ボクたちは講義に出ながら、爽(さわ)やかな夏の訪れとともに、あることを感じていた。


「今年は二人で旅行でもしようかな」と。


 ボクが七月終わりの前期試験終了後に、三泊四日で東京に旅行に行くことを決めた。


 ボク自身、東京は二回目だった。


 大学受験のときに一度行って、それから一度も行っていない。


 愛理香はどうやら初めてのようだった。


 ボクも彼女も基本的に田舎育ちなので、大都会を旅行した経験は皆無に等しい。


 町から最寄の空港まで行き、そこから羽田行きの飛行機に乗って、ボクたちは日本の心臓部へと向かった。


 約二時間のフライトを経て、ボクたちは羽田空港に降り立ち、そこから京急線で品川まで出る。
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